ブックタイトル週刊ダイヤモンド16年2月13日号_試し読み

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週刊ダイヤモンド16年2月13日号_試し読み

World Scope髙山 真 from 欧州Shin Takayama三菱東京UFJ銀行経済調査室ロンドン駐在 近のロンドンでは、カンガルーが食事の配達をしている。もちろん、本物のカンガルーではない。配達サービスベンチャー企業「デリバルー」の配達員たちだ。彼らが荷物を入れて運ぶ配送箱には、会社名とカンガルーのロゴマークが大きくプリントされており、街中でもなかなか目を引く存在となっている。この新種のカンガルーを頻繁に見掛けるようになったのは、昨年後半くらいからだったと記憶している。 デリバルーのサービスは、出前の代行だ。自前では出前を行っていないレストランからの配達を請け負い、個人宅やオフィスに届けて、レストランと注文者から手数料を受け取る。注文は、デリバルーのウェブサイトでレストランとメニューを選んで行い、注文確定後、配達予定時刻などが電子メールで連絡される仕組みだ。注文者側の手数料は、配達1件当たり一律2・5?となっている。 ロンドンでは、以前から自前の配達員を使って出前を行っている飲食店は少なくないが、その多くはピザや中華料理だった。和食の仕出し弁当などもあることはあるが、基本的には気軽に食べられるカジュアルな料理が中心だ。デリバルーのユニークな点は、そうした従来のラインアップにはなかった、若干高めの価格帯の料理の配達という新しい市場を開拓したところだ。提携レストランを見ると、本格的なイタリアンやステーキ店のほか、ミシュラン一つ星のインド料理店なども名前を連ねている。 デリバルーは、米大手投資銀行モルガン・スタンレー出身のウィリアム・シュー氏が2013年に立ち上げた。起業のきっかけは、モルガン・スタンレー時代のシュー氏の転勤にあったそうだ。04年、同氏がニューヨークからロンドンに異動になった際、ロンドンではニューヨークに比べて配達を頼める料理が少ないことに落胆し、このビジネスを思い付いたという。 デリバルーは急速に業容を拡大しており、昨年11月時点で英国の30都市でサービスを展開中であるほか、欧州を中心に海外20都市に進出している。同社の急成長は、順調な資金調達にも支えられている。昨年11月にベンチャーキャピタルなどから行った1億㌦の調達をはじめ、これまでの累計調達額は約2億㌦に上る。 デリバルーのような新興企業の活躍は、英国経済の強みの一つでもある。英国の開業率(起業件数の既存企業数に対する比率)は約12%と、日本の2・5倍以上の高さであり(図参照)、毎年20万社以上の企業が設立されている。世界銀行のビジネス環境調査報告においても、英国は「起業のしやすさ」が世界189カ国中17位と、米国(49位)、日本(81位)、ドイツ(107位)に比べて上位に位置する。 また昨年12月、デリバルーは、英国政府のITベンチャー企業支援プログラム「フューチャー50」の対象企業に選ばれた。同プログラムは、将来が有望視されるITベンチャー企業50社を選定し、事業展開や資金調達面で政府が重点的に支援を行う制度だ。 このように新しいビジネスを生み出し育てる素地があり、またそうした革新性が古くからの伝統と同居している点が、英国経済の面白さであり、強さといえるだろう。ロンドンで活躍する新種のカンガルーが示す英国の起業しやすさ日本・米国・英国・ドイツの開業率02468101214*日本、英国、ドイツの開業率は2009~13年の平均値、米国は06~10年の平均値。厚生労働省、米中小企業庁、欧州統計局の統計を基に三菱東京UFJ銀行経済調査室作成(%)日本米国英国ドイツ新種のカンガルー「デリバルー」のロゴ最21 週刊ダイヤモンド 2016/02/13