ブックタイトル週刊ダイヤモンド16年2月13日号_試し読み

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週刊ダイヤモンド16年2月13日号_試し読み

Special Featureる人材を育成してこなかったツケが、戦後70年を迎えた日本で出てきているのではないか││。 それは、企業活動においてもいえる。例えば、1980年代のソニーには、先に紹介した「戦略の7階層」でいえば、世界観も政策も大戦略もあった。だから、世界中でヒットした「ウォークマン」を生み出せたし、海外メーカーとの戦いにおいても軍事戦略、作戦、戦術、技術まで全てそろっていた。80年代のソニーは、世界を相手に戦う日本企業の代表選手だった。 だが、モバイル機器の常識を塗り替えた「iPhone」は、ソニーではなく米アップルから発売された。アップルの本社は、世界観、政策、大戦略などを中心に担う。軍事戦略以下にも関与はするが、最下層の技術(ものづくりの領域)は専門メーカーに発注し、自らは総合プロデュースに徹する。 一方で、戦後の日本のメーカーが得意だったことは、軍事戦略とそれより下にある作戦、戦術、技術の領域だった。確かに日本のメーカーの技術力は世界一かもしれないが、米国や中国のメーカーは正反対の、世界観、政策、大戦略という領域にほぼ特化している。 地政学は決して、戦争のためだけの学問領域ではないのである。 昨年12月23日、ウクライナ西部の都市イヴァーノ=フランキーウシク周辺で数時間に及ぶ停電が発生した。事前に標的型メールによって電力監視制御システムの端末にマルウエア(ウイルス)が仕掛けられていたのが原因だ。ウクライナ保安庁は、ロシアからのサイバー攻撃であると断定、発表した(ロシア側は否定)。 この攻撃が周到だったのは、停電と同時に電力会社の電話システムにもDoS攻撃(一斉に大量の接続要求を行ってサービスを妨害する行為)を行っていたことだ。通信網をまひさせて復旧を遅らせ、混乱を増幅させるといった複合的な攻撃は、物理的な軍事作戦においても常とう手段だ。サイバー攻撃はいまや、リアルな戦争の補助機能として、軍備の一つと目されている。 米「ウォールストリート・ジャーナル」紙によれば、現在29カ国が正式なサイバー攻撃軍あるいはサイバー諜報部隊を持ち、49カ国がサイバー攻撃ツールを購入、63カ国が国内外の監視目的でツールを活用しているという。日本でも2014年3月、自衛隊指揮通信システム隊の中にサイバー防衛隊が組織されている。 セキュリティー企業の米ノース社は、サイバー攻撃の発信元と攻撃先をリアルタイムで見られるマップを公開している(下画像)。大陸間を光の束が行き交う様子は、本物の空爆さながらだ。そして、特に米国と中国の間でひっきりなしに攻撃が繰り返されていることが分かる。 昨年9月の米中首脳会談では、オバマ米大統領が中国にサイバー攻撃をやめるようくぎを刺したが、習近平中国国家主席は「中国も被害者だ」としらを切った。「難しいのは、ミサイルでインフラを攻撃されれば、国の仕業と分かるが、サイバー攻撃はその攻撃主体が国なのか個人なのか曖昧なこと。どこからが戦争で、どこまでが刑事事件か、攻撃された場合どこまで反撃していいのかなど、明確な国際法があるわけではない」と、マカフィーの佐々木弘志サイバー戦略室シニアセキュリティアドバイザーが説明する。13年にNATO(北大西洋条約機構)の専門委員会がサイバー戦争と国際法の関係性を記載した「タリン・マニュアル」という文書を作成しているが、こうした動きはまだ緒に就いたばかりだ。「日本に対しては、情報漏えい目的の攻撃が中心だが、伊勢志摩サミットや東京オリンピックなど国際的に注目されるイベントが、国のメンツをつぶす目的や、攻撃者の示威行為という面で狙われる可能性は高い」と佐々木氏は言う。 サイバー攻撃技術は小国でも簡単に持てる。である以上、今後も「軍拡」競争は止まりそうもない。Column リアルな戦争の補助機能無法状態のサイバー攻撃週刊ダイヤモンド 2016/02/13 36世界のサイバー攻撃の様子をリアルタイムで見られるノース社のサイト(map.norsecorp.com/)