ブックタイトル週刊ダイヤモンド16年2月13日号_試し読み

ページ
37/48

このページは 週刊ダイヤモンド16年2月13日号_試し読み の電子ブックに掲載されている37ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

週刊ダイヤモンド16年2月13日号_試し読み

特集地政学◯超入門 政学リスクが経済に大きな影響を与えるというのは、今さら言うまでもないことですが、昨今は、大国が国益や安全保障のために他国に対して経済的な強制力を使うことも増えています。経済的手段が地政学的な国際関係に強い影響を及ぼす。つまり「地政学(ジオポリティクス)」が経済と深く結び付いた、「ジオエコノミクス」の時代といえます。 経済的手段には、貿易規制もあれば知的財産の行使もありますが、大きなインパクトを持つのが経済制裁です。また、中国のような「国家資本主義」の国では、自国の利益のためにあらゆる手段を講じる動きがあります。中国国内でグーグルのサービスの使用が制限されていることなどはその典型です。「経済戦争」という言葉通り、すでに世界は新種の戦争状態にあるといってもいいでしょう。核兵器の使用はもちろんのこと、20世紀型の戦争は、民主主義国家ではなかなか実行しにくくなっています。その中で、経済的強制力、そしてサイバー攻撃が有効な手段となっています。 米国が「世界の警察」の役割から降り、米国一極集中から多極化に向かう中、崩れた秩序と均衡のはざまに、経済的手段を用いた国益の衝突や、宗教を背景としたテロ集団ネッInterview御立尚資● ボストン コンサルティング グループシニア・パートナー&マネージング・ディレクター経済と地政学が結び付いた「ジオエコノミクス」の時代トワークのような非国家組織の台頭など、異なる複数の〝軸?が絡み合い、世界が見えにくくなっています。 だからこそ今必要なのは、大きい歴史観と、それぞれの国や非国家組織が歴史の中で持っている〝感情?を理解することです。 梅棹忠夫は『文明の生態史観』の中で、古代文明が発達したり、巨大な帝国が成立と崩壊を繰り返してきた地域の周縁で、高度な文明社会が遅れて形成されたと説明しています。西欧と日本がそうです。気候が温暖で、古代文明や帝国にとっての「辺境」の地だったが故に、絶対王制だけでなく、ブルジョワジーが育ち、高度工業国家となれた。ついには植民地争奪戦を行う力を付けていったというのです。 逆に、中国、インド、ペルシャ、トルコといった、かつて古代文明や大帝国を形成した地域の人々は、遅れて発展し、工業化した国々の植民地とされたというルサンチマン(憎悪やねたみ)を持っている。そういう歴史的な感情を理解することが大事なのです。地政学を肌で感じざるを得ない欧州では、リーダーが、そのへんの感覚をちゃんと持っています。われわれも意識的にその感覚を得る努力をしなければなりません。 さて、多くの企業の中期計画は「発生確率5割以上のメーンシナリオ」に基づいて立てられています。しかし、ジオエコノミクスの時代には、発生確率が1、2割でもインパクト大の事象を幾つか想定し、その波及効果と事前の対応策を考え抜くことが不可欠です。 あるアジアのコングロマリットでは、北朝鮮の崩壊リスクを想定しています。その場合、大量の難民が韓国に流入するだろうし、北朝鮮との国境に近い中国・大連市なども大混乱に陥るかもしれない。もしその地域に工場があるなら、サプライチェーンの代替案を用意しておかなければならない。事前に想定しておくのと、事が起こってから対処するのとでは、雲泥の差が出てきます。 ジオポリティクスを考慮したシナリオプランニングは、極めて重要な経営のツールとなるでしょう。 (談)37 週刊ダイヤモンド 2016/02/13Kazutoshi Sumitomoみたち・たかし/1957年兵庫県生まれ。京都大学文学部卒業後、79年に日本航空入社。92年米ハーバード大学MBA取得。93年米ボストン コンサルティング グループ入社。2005年日本代表に就任。15年末より現職。近著に『ジオエコノミクスの世紀』(共著)。地